実地試験は、机上試験から始まります。試験員が模擬飛行計画を示し、飛行計画の作成において留意が必要な事項を問う科目です。二等5分4問、一等10分5問。問われるのは地図から危険を拾う技能です。
手がかりは地図記号です。小学校で覚えたあの記号が、飛ばす人には危険の一覧になります。ただしすべてが載っているわけではありません。このページでは、国土地理院の地図記号一覧(2022)を飛行計画の目で読み直します。最後に例題を付けました。
机上試験は、何を問う科目か
机上試験は基本にも限定変更にも置かれ、中身はどれも「飛行計画の作成」。違うのは時間と問題数だけです。
| 資格 | 制限時間 | 出題数 | 失いうる点 |
|---|---|---|---|
| 二等(基本・限定変更とも) | 5分 | 4問 | 最大20点 |
| 一等(基本・限定変更とも) | 10分 | 5問 | 最大25点 |
出典:一等・二等 無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)(令和7年12月5日改正・令和8年6月5日施行)の各章「2. 机上試験」および第II章5「机上試験の減点適用基準」。
二等は余白30点に対して、失うのは最大20点。ところが一等は余白20点に対して最大25点。細則は「各試験科目終了時に」80点以上を求めるので、一等は機体に触れる前に不合格になりえます。
細則が挙げる「留意事項(例)」は、次の4つです。
特定飛行に当たるものが写り込んでいないか。
第三者、立入管理、緊急着陸地点。どれも地図から読む。
耐風性能や電波の届く範囲を、地形と照らす。
帰還の高さは、経路上でいちばん高いもので決まる。
修了審査では「机上審査」と読み替えられ、問題は国又は指定試験機関から提供されたものを用いると細則にあります。このページの例題は当校が作ったもので、実際の出題とは関係ありません。
教則は、地図で探すものをもう挙げている
教則(第5版)には、飛行前に確認すべき項目が表で並んでいます。飛行空域及びその周囲の状況の確認は、こうです。
・航空機や他の無人航空機の飛行状況、空域の状況(空港・ヘリポート、管制区域・航空路等)
・障害物や安全性に影響を及ぼす物件(高圧線、変電所、電波塔、無線施設等)の有無
・小型無人機等飛行禁止法の飛行禁止空域、緊急用務空域、飛行自粛要請空域等の該当の有無 5.1「操縦者の行動規範及び遵守事項」/運航者がプロセスごとに行うべき点検
住宅、学校、病院、道路、鉄道、高圧線、変電所、電波塔。ほとんどが地図記号です。机上試験は、この表を地図の形で問い直しているとも言えます。
記号を、危険に読み替える
一覧の記号を、飛行計画の目で7つに束ね直しました。形を覚えるための一覧ではありません。凡例で名前が分かったあと、それをどう扱うかの一覧です。
「多数の者の集合する催し」(教則の例は祭礼、縁日、運動会)の上空は「カテゴリーⅡA飛行」で、立入管理措置では済みません。地図に時間は描かれていません。
自動車も鉄道車両も「物件」で、中の人は第三者。しかもこちらでは止められません。飛行範囲を手前で切るしかない。索道はワイヤーが飛行高度を横切ります。
鉄塔も電線も「物件」。30m未満は特定飛行です。ただし地図に高さはありません。分かるのは「高塔=概ね60m以上」という載る条件だけ。
教則は地磁気に影響するものとして「高圧線や変電所、電波塔、鉄材の多い建物、電車の鉄道」を挙げます。発電所等の記号は変電所も指します。
緊急着陸地点は地図の上で先に決めます。田は水没や作物の被害、荒地は湿地や沼地も含みます。樹木は物件ではありませんが、引っかかれば回収できません。
主曲線10m、計曲線50mごと。航空法の150mは地表からの高さです。高度を保ったまま谷に出れば増え、丘へ向かえば詰まります。尾根の向こうは機体も電波も見通せません。
飛行計画には緊急連絡先を書きます。病院の記号は救急病院と救急診療所なので、そのまま搬送先の候補です。
地図に載るには、基準がある
国土地理院は記号ごとに「何を表示するか」を公開しています。関係の深いものを抜き出します。
| 記号 | 載る基準(国土地理院) | 読み替え |
|---|---|---|
| 高塔 | 高い塔(送電線鉄塔を除く)で、高さが概ね60m以上のもの | 60m未満の塔は載らない |
| 高層建物 | 高さ60m以上の非木造建物 | 59mのビルは普通の建物 |
| 電波塔 | 送受信を目的としたもののうち、主なもの | すべては載らない |
| 病院 | 救急病院や救急診療所 | クリニックの多くは載らない |
| 老人ホーム | 特別養護・養護・軽費老人ホーム | この3種類以外は載らない |
| 送電線 | 道路、鉄道、建物の記号の中には表示しない | 途切れて見えても続いている |
| 電柱・引込線 | 該当する記号がない(教則は「物件」に挙げている) | 人が引っかけるのは、たいていこちら |
出典:国土地理院「地図記号一覧」の各記号の解説ページ。
例題:この地図で、何を確かめるか
答えを見る前に、地図だけで考えてみてください。
①飛行範囲を、送電線が斜めに横切っています。計画で考えることは何ですか。
- 30m未満は特定飛行。ただし地図に高さはなく、くぐるのか越えるのかは現地で見るまで決まりません。素直な計画は、範囲を送電線の手前で二つに割ること。東の端で線が途切れるのは、鉄道の記号の中に送電線を描かない決まりのせいです。
②飛行範囲の北に県道、東にJR線があります。立入管理措置は、どこまで及びますか。
- 道路の車も列車も止められません。立入管理措置には含められないので、機体が行きうるいちばん外側から30mを測り、旋回と風で膨らむぶんの余裕を取ります。電化区間なら架線も。
③北に小・中学校、西の林の中に神社があります。飛ぶ日を決めるとき、何を確かめますか。
- 学校は運動会、神社は祭礼と縁日。「催し」に当たれば上空は「カテゴリーⅡA飛行」で、立入管理措置では済みません。催しがなくても、登下校の時刻には人が出ます。
④緊急着陸地点を、地図のどこに置きますか。
- 候補は河川敷の荒地と刈り取り後の田(荒地には湿地も含まれ、田は所有者の了解が要ります)。避けるのは竹林・川・道路と線路。離陸地点に戻れない前提で、二つめまで決めます。
試験の地図と、現場の地図
地図の読み方は試験のためのものではありません。違うのは、地図の外側です。
現場では、この上に人口集中地区、空港等の周辺、小型無人機等飛行禁止法の禁止空域、緊急用務空域、他機の飛行計画を重ねます。当校はそれを地図上で見る DIPS Viewer を自社開発しています。ただしいちばん下の一枚を読めなければ、何枚重ねても同じです。
この資料のまとめ
- 1机上試験は二等5分4問、一等10分5問。一等は余白20点に対して最大25点を失いうる。
- 2教則の確認項目(学校、病院、道路、鉄道、高圧線、変電所、電波塔、標高)は、ほとんどが地図記号。
- 3記号には載る基準がある。高塔は概ね60m以上、電柱と引込線には記号がない。載っていないことは、無いことの証明ではない。
- 4試験の地図には凡例が付く。暗記ではなく、危険に読み替えられるかが問われている。
出典
記号の図は「地図記号一覧」(国土地理院)を加工して作成。例題の地図は架空です。2026年9月時点の細則・教則にもとづきます。