2026年6月5日施行の実地試験実施細則の改正で、口述試験(飛行前点検)に制限時間が入りました。飛行空域等の確認に3分、作動前点検と作動点検を通じて12分。細則は「制限時間内に回答、点検又は記録を行わなかった場合は、未回答、点検漏れ又は記録漏れがあったものとして取り扱う」としています。時間切れが、そのまま減点になりました。
一方で、現場の日常点検に制限時間はありません。制限時間がついたことで、試験の点検は「決まった順番を、決まった時間で、伝わるように行う手続き」として純化されました。試験のための点検と、事故を防ぐための点検は、目的が違います。この資料は、その二つを並べて一枚で見えるようにするものです。
まず、何分になったのか
二等・マルチローターの基本の場合、細則の制限時間は次のとおり。網掛けが飛行前点検です。
| 番号 | 試験科目 | 制限時間 |
|---|---|---|
| 2-1 | 机上試験(飛行計画の作成)出題数4問。一等は10分 | 5分 |
| 3-1 | 口述試験・飛行空域及びその他の確認 | 3分 |
| 3-2 | 口述試験・作動前点検 | 12分2科目を通じて |
| 3-3 | 口述試験・作動点検 | 12分2科目を通じて |
| 4-1 | 実技試験・スクエア飛行 | 8分 |
| 4-2 | 実技試験・8の字飛行 | 8分 |
| 4-3 | 実技試験・異常事態における飛行 | 6分 |
| 5-1 | 口述試験・飛行後点検 | 5分2科目を通じて |
| 5-2 | 口述試験・飛行後の記録 | 5分2科目を通じて |
| 6-1 | 口述試験・事故/重大インシデントの説明 | 3分 |
| 6-2 | 口述試験・事故等発生時の処置の説明 | 3分 |
出典:二等 実地試験実施細則。一等も飛行前点検は3分+12分で、机上試験と実技試験の時間だけ異なります。
注意したいのは12分に「日常点検記録への記入」まで含まれることです。点検して、声に出して、書く。段取りが要ります。
救いもあります。細則1-5に「複数生じた場合には最も減点数が高いもののみを適用」とあり、点検漏れが二つでも20点にはなりません。とはいえ10点は、余白30点の3分の1。
急ぐ必要は、まったくない
この制限時間は、試験全体の持ち時間ではありません。上の表のとおり科目ごとに区切って計測されます。その科目の時間は、使い切ってかまわない。焦って早口になれば伝わらず、伝わらなければ「行っていない」扱いです。速く終えても点は増えず、抜けたときにだけ減ります。
戻ってよいのは、異常の疑いが出たときだけ。
「プロペラ、損傷なし」と言えていれば伝わっています。
置き方を整える動きは採点されません。
何を書くか迷っている間は、点検が止まっています。
目安は、一項目につき見る・言う・(必要なら)書くを一度ずつ。止まってよいのは、異常を見つけたときだけです。
試験で問われる点検表
細則が「確認事項(例)」「点検項目(例)」として挙げるのは次の13項目。(例)とあるとおり、当日の指示は試験員が出します。
- 飛行空域及びその周辺の状況に問題はないか
- 航空法等の違反はないか
- 必要な許可書、承認書、技能証明書等を携帯しているか
- 操縦者の体調等に問題はないか
- 気象状況に問題はないか
- 各機器が確実に取り付けられているか(ネジ、コネクター等の脱落やゆるみ)
- 機体(プロペラ、フレーム、機体識別票等)及び操縦装置に外観の異常、損傷、ゆがみがないか
- 電源系統は正常か
- 通信系統(機体と操縦装置の通信、GNSS等)は正常か
- 燃料の搭載量又はバッテリーの残量は十分か
- リモートID機能は正常か(非搭載機は正常と仮定して点呼を行う)
- 推進系統(発動機又はモーター等)は正常か
- 自動制御系統及び操縦系統は正常か(離陸地点直上でホバリングさせて操作する)
細則には「試験再開が可能なときは、受験者が不具合を確認するまでに行った点検項目は試験員が点検を行う」とあります。現場では、そうはなりません。
現場で記録する点検表
一方、飛行日誌の日常点検記録の様式に並ぶのは次の13項目。粒度も並びも違います。
機体全般/プロペラ/フレーム/通信系統/推進系統/電源系統/自動制御系統/操縦装置/バッテリー・燃料/機体識別表示/リモートID機能/灯火/カメラ
試験の側は実施のタイミングで、現場の側は機体の部位・系統で切られています。当校の記録様式は、この二つを1枚に重ねました。
様式の13項目に①作動前/②作動点検(地上)/③作動点検(飛行)を併記し、採点対象を網掛けで示しました。
点検を飛ばして先へ進むと、文字通り落ちる
記録様式の①②③は、そのまま作業の順番です。
- ①電源を入れる前に、外観を見る。
- ②電源を入れ、機体を地上に置いたまま動作を確かめる。
- ③浮かせて、ホバリングで確かめる。
試験で大事なのは、点検項目をその通りに声に出すこと。言わなかった点検は「行わなかった」ものとして扱われます。
現場で大事なのは、実際に点検していること。声に出しても、見ていなければ意味がありません。
試験で採点されるのは、電源を入れた後の状態です。細則の書き方も「電源を投入した際の状態は正常か」。プロポと機体のどちらを先に入れたか、つながった相手を確かめたかという作業そのものに、採点表の欄はありません。
現場では、ここがいちばん飛ばせない手順です。プロポを入れ、機体を入れ、自分の機体とつながったこと、帰還地点、電波が切れたときの動きを確かめてから、アームする。ここを見ないまま浮かせれば、つながりが切れた瞬間、機体は確かめていない設定のとおりに動き、文字通り落ちます。
この資料のまとめ
- 1飛行前点検に制限時間(3分+12分)。時間切れは点検漏れ(10点)・記録漏れ(5点)扱い。
- 2時間は科目ごとに計測される。急ぐ必要はない。足りなくなるのは、見に戻る・言い直す・置き直すという動きのほう。
- 3試験は「声に出して伝える」、現場は「実際に見る」。どちらも①作動前→②地上→③飛行の順で、前の段階を終えずに次へ進まない。
出典
- 実地試験実施細則 二等(PDF)/一等(PDF)/令和7年12月5日改正
- 実地試験実施基準(PDF)/国土交通省。様式は通達「飛行日誌の取扱要領」に準拠
令和8年6月5日施行時点の細則にもとづく解説です。受験にあたっては最新の原文をご確認ください。